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一人一色、それぞれの色、
涙のグラデーションを描く
2018年に、「役者100人展」がスタート。
この初めての開催時のテーマが役者100人の[泣き顔]だった。
泣くという一つの感情を100人もの役者がそれぞれ裏テーマに合わせて表現するというもの。
裏テーマというのが、今回のテー マでもある“色”だ。
当時のgekichapの参加メンバーそれぞれが担当する色が存在した。
全8色のテーマカラーは赤・青・黄色・緑・水色・ピンク・オレンジ・紫(本来は和名で表記)の色があり、参加者は
担当者の色をテーマに泣くという題材である。
「○○色で泣い てください」というざっくりとしたオーダーに答えて、100人もの役者がそれぞれ泣くという感情を表現した。
作品は敢えてモノクロで 展示をした。
展示を見に来たお客様にはテーマの色は伏せた状態で、まず写真を見てもらう。
全ての写真を見終わったらQRコードを読み取って色の答え合わせをして、各俳優の表現している色を認識した状態で
更にもう一周写真を見てもらうという体感型の展示を実施した。
色というテーマの中で一人一人の役者が涙を流す、その1枚しかない写真から何を感じるか...
[役者にしか表現の出来ない写真展]
と銘打って開催した泣き顔展はある意味伝説的で代表的な題材となった。
今回はこの[泣き顔展]をリメイクした。
まるで静寂の中の水面に雫を落とすかのように感情で波動を起こし、涙のグラデーションを作りたいと考えたからだった。
偶然的に集まった複数の役者で、一人一人が持つ個性や感情を色で染めて表現してもらった。
共通するのは一つの感情[涙]のみ。
色は被らせることはなく、一人一人が撮影当日に色のカードを引いた。
引き当てた色を限られた時間の中で涙として表現をする。その瞬間を写真に刻み込み、モノクロの作品として展示。
[泣き顔展]と大きく違う点は、涙を流し表現を出し切った時点で、共通の台詞を言ってもらうこと。
そこにはもしかしたら怒りが混ざっていたり、それは悲しみかもしれないし、喜びが混ざり込むかもしれない。
“色”がどのような作用を生むかは正直わからなかった。
ただ“泣く”だけではない、一つの感情の中に複雑に混ざり合う言葉には出来ない魂を見てみたいと思った。
これは役者100人展だから出来る挑戦である。
1秒にも満たない僅かな瞬間に溢れた感情が作品を目撃した方の脳裏に何かを焼き付けられるような
“これからに繋がる存在を描く”展示にしたいと考えている。